………….ドーーーーン!!





耳をつんざくような爆音がした。



びりびりと空気が震えている。




振り返ると、さっき通り過ぎたばかりの鉄工所から、勢い良く炎が立ち昇った。






「焼夷弾だ!!」




「火事になるぞ!!」




「防空壕から出ろ!!」





消防団の人たちが大声で指示をしている。




焼夷弾は、ガソリンなどの燃料が入った恐ろしい爆弾。



当然火事になり、そうなると防空壕も燃えてしまうのだと、ツルさんが以前教えてくれた。




家々が建ち並ぶ路地から、持ちきれないほどの荷物を持った人、大荷物を大八車に乗せた人々が、わらわらと出て来る。




表通りは人や車で急激に混雑して、あたしは流れに身を任せるしかなくなってしまった。






「南町がもうやられた、火事でえらいことだ!!」





「北に逃げろ、高台に………それか川だ………」





鉄工所が燃える、ごうごうという音が、余計に焦りを感じさせた。




パニックになった人々が、血眼になって高台へ向かう。





あたしはどんどん帰り道から離れていくのが気になって、人波を掻き分けて集団から外れた。




………とにかく、一度もどらなきゃ。




そうしないと、もう二度と帰れなくなってしまう気がした。