…………ーーーーン………





遠くから微かに、サイレンのような音が聞こえてきた。




道の真ん中に立ち止まって、音の正体を確かめようとする。





…………ウーーーーン………





今度はさっきよりも近くなったようで、はっきりと聞こえた。




なんとも言えない不気味な音。





そして、その音はさらに近づいてきた。




周りの人たちがざわざわと騒ぎ出す。



空を見上げて、様子を窺っているようだ。





次の瞬間、鼓膜が破れそうなほど大きな音で、すぐ近くでサイレンが鳴り始めた。






ーーー空襲警報だ。



この時代に来てから、何度も聞いた音。



でも、一人きりでいる時に警報が鳴ったのは、今日が初めてだった。




心臓をぎゅっと掴まれたような気がして、一気に冷や汗が噴き出した。





………どうしよう、本当に空襲が来たら。




警報のサイレンが鳴ったからって、必ずしも空襲があるとは限らない。



それは分かっている。



今までは結局、何事も起こらなかったし。




でも、もし、万が一………。