『今から70年前、特攻隊の戦闘機は、片道分の燃料と爆弾だけを積んで南の空へと飛び立って―――』



深刻そうな声のナレーション。

あたしはちらりとテレビ画面に目を向けた。


白黒の画面に、海に浮かぶ軍艦に向かって空から一直線に飛び込んでいく小さな飛行機が映っていた。


その飛行機が甲板にぶつかると同時に、爆発がおこる。

でも、軍艦は揺れただけで、沈むことはなかった。


特攻隊、ね。

そういえば、今日の歴史の授業でも、ヤマダがそんなこと言ってたな。


くだらない、と思う。

最近、海外で自爆テロとかが問題になっているけど、日本人だって昔は似たようなことをしていたわけだ。


まあ、興味ないけど。

何十年も昔のことなんて、どうだっていい。


戦争の番組は、むやみに暗い気分になるから好きじゃない。


あたしはチャンネルを適当に変えた。


カーテンを揺らし、首筋をなでていくぬるい風を感じながら、あたしはテレビに背を向けてうたた寝を始めた。