途中で曲がるところを間違って、少し遅くなってしまったけど、なんとか田島さんの家に辿り着いた。




すごく大きな家で、玄関の前に立って声をかけると、上品なおばあさんが出てきた。





「あら、どちらさまかしら?」




「鶴屋食堂の者です」




「あぁ、ツルさんとこの?」




「はい。あの………これ」






着物を見せると、慣れた様子で奥からお米の入った布袋を持ってきてくれた。




たったこれだけ?と驚いてしまうくらいの量だった。




でも、今はそれくらい、白米が貴重な品なのだ。





ツルさんの大事な着物が、片手で持てるほどの量だけのお米に変わってしまった。




そのことに何とも言えない切なさと虚しさを感じながら、あたしは田島さんの家を後にした。





風呂敷に包んだお米を抱きしめながら鶴屋食堂に向かって歩く。





カンカンカンと鋭い金属音がする鉄工所の横を通り過ぎて、しばらく経った頃。