あたしはツルさんの大事な銘仙の着物を風呂敷に包み、ぎゅっと胸に抱えた。
「百合ちゃん、おつかい?」
隊員さんの数人が、店の外に出ようとするあたしに気づいて声をかけてくれた。
「気をつけて行っておいでよ」
「うん、行ってきます」
あたしは彼らに手を振り、ツルさんが渡してくれた地図を頼りに歩き出した。
少し歩くとすぐに汗が噴き出してくるほど、暑い日だった。
手拭いで汗を拭き拭き歩く。
今日がお風呂に入れる日でよかった……なんて思いながら。
町の人たちは、以前に比べてどこか暗い表情を浮かべている気がした。
沖縄が占領されて、本土空襲が始まり、誰もが心の奥底に不安を抱えている。
もしかして日本は敗けるんじゃないか。
そんな思いがじわじわと波のように押し寄せて、町じゅうを覆っているようだ。
きっとそれは、今、日本のどこでも同じなんだろう。
「百合ちゃん、おつかい?」
隊員さんの数人が、店の外に出ようとするあたしに気づいて声をかけてくれた。
「気をつけて行っておいでよ」
「うん、行ってきます」
あたしは彼らに手を振り、ツルさんが渡してくれた地図を頼りに歩き出した。
少し歩くとすぐに汗が噴き出してくるほど、暑い日だった。
手拭いで汗を拭き拭き歩く。
今日がお風呂に入れる日でよかった……なんて思いながら。
町の人たちは、以前に比べてどこか暗い表情を浮かべている気がした。
沖縄が占領されて、本土空襲が始まり、誰もが心の奥底に不安を抱えている。
もしかして日本は敗けるんじゃないか。
そんな思いがじわじわと波のように押し寄せて、町じゅうを覆っているようだ。
きっとそれは、今、日本のどこでも同じなんだろう。