第二章 仲夏




第1節 襲いくる炎












七月になった。



暑さが本格的になってきて、ただでさえ暑いこの土地は、うだるような熱気に覆われていた。




今日は基地の訓練がお休みの日で、鶴屋食堂には昼前から隊員たちが集まっている。




彰たちの隊は清掃当番だとかで、遅れてくるらしかった。





あたしは給仕をしながら、深刻そうな顔つきで交わされる隊員たちの会話を、聞くともなく聞いていた。





「沖縄の守備軍が全滅したらしい」




「本当か」




「沖縄はすでに連合国軍に占領されているというぞ」




「いよいよ危機的だな………」




「新聞で読んだが、東京や大阪、神戸、名古屋あたりでB29の爆撃による大空襲があったらしい」




「大都市は軒並みやられたってことか………」




「疎開先の田舎も、そろそろやられるかもしれんな………」





重苦しい単語ばかりが聞こえてくる。




あたしは思わずため息を洩らした。