第二章 仲夏
第1節 襲いくる炎
*
七月になった。
暑さが本格的になってきて、ただでさえ暑いこの土地は、うだるような熱気に覆われていた。
今日は基地の訓練がお休みの日で、鶴屋食堂には昼前から隊員たちが集まっている。
彰たちの隊は清掃当番だとかで、遅れてくるらしかった。
あたしは給仕をしながら、深刻そうな顔つきで交わされる隊員たちの会話を、聞くともなく聞いていた。
「沖縄の守備軍が全滅したらしい」
「本当か」
「沖縄はすでに連合国軍に占領されているというぞ」
「いよいよ危機的だな………」
「新聞で読んだが、東京や大阪、神戸、名古屋あたりでB29の爆撃による大空襲があったらしい」
「大都市は軒並みやられたってことか………」
「疎開先の田舎も、そろそろやられるかもしれんな………」
重苦しい単語ばかりが聞こえてくる。
あたしは思わずため息を洩らした。
第1節 襲いくる炎
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七月になった。
暑さが本格的になってきて、ただでさえ暑いこの土地は、うだるような熱気に覆われていた。
今日は基地の訓練がお休みの日で、鶴屋食堂には昼前から隊員たちが集まっている。
彰たちの隊は清掃当番だとかで、遅れてくるらしかった。
あたしは給仕をしながら、深刻そうな顔つきで交わされる隊員たちの会話を、聞くともなく聞いていた。
「沖縄の守備軍が全滅したらしい」
「本当か」
「沖縄はすでに連合国軍に占領されているというぞ」
「いよいよ危機的だな………」
「新聞で読んだが、東京や大阪、神戸、名古屋あたりでB29の爆撃による大空襲があったらしい」
「大都市は軒並みやられたってことか………」
「疎開先の田舎も、そろそろやられるかもしれんな………」
重苦しい単語ばかりが聞こえてくる。
あたしは思わずため息を洩らした。