もう、何も言えなかった。




あたしが黙りこんでいると、熱血漢の加藤さんが口を開いた。






「百合ちゃん、俺はね。

ちょうど開戦した頃から中学校の教師をしていたんだ。


戦争が激化してきて、俺の初めての教え子だった何人かが、学徒出陣で戦場に行ったという噂を聞いた。

そして、そのうちの数人は戦死したということも………。


俺は歯がゆくてたまらなかったよ。

教え子が空襲にやられたり、遠い南方で戦死したりしているのに、教師の自分は何をしているのか、って。


だから、赤紙が来たときは心底うれしかった。

これでやっと、自分が教え子たちを守る立場に立つことができると思った。


配属された基地で特攻の志願者が募られたとき、俺は一番に手を挙げたよ」






熱く語る加藤さんの目は、誇らしげに輝いていた。




あたしはやっぱり何も言えなかった。