あたしは泣きそうになるのを堪えながら、低い声で寺岡さんに訴える。






「……….奥さんはきっと、一人で心細い思いをしてるよ。

女手一つで子育てするのって、すごくすごく大変なんだから。

寺岡さんが近くにいてくれたら心強いのに、って、きっと思ってるよ」






すると寺岡さんは、胸ポケットからまた何かを取り出した。





それは、写真と同じくらいぼろぼろになった手紙だった。




きっと寺岡さんは、何度も何度も、すりきれるまで、この手紙と写真を見たんだ。




だからこんなにもぼろぼろになってしまったんだ。





そう思うと、悲しくて切なくて仕方なかった。





手紙は筆と墨で書かれていて、達筆すぎてあたしには読めなかった。




それに気づいて、彰が代読してくれる。






「昌治郎様、お元気でいらっしゃいますか。

こちらは靖子も佳代もたいそう達者でおります。


お国の為に、天皇陛下の御為に、尊いお仕事をなされる貴方様を、この靖子は誇りに思い申し上げます。


幼い佳代のことは、安心して靖子にお任せください。

貴方様は何の心残りも未練もなく、どうかお仕事を成し遂げてくださいませ。


遠い空よりご武運をお祈りしております」