「佐久間ってなぁ、なんと、あの早稲田の学生なんだよ。

早稲田で哲学の研究してたんだってよ。

秀才だ、秀才! だからこんな小難しい本を、小難しい顔で読めるわけだよ」






ワセダ……って、あの早稲田大学?




でも、そのときのあたしは、それがすごいということよりも、もっと別のことに心を奪われていた。





だって………ひどくない?



早稲田大学に通っているような優秀で将来有望な学生まで、戦争に駆り出されるの?




別に有名じゃない大学に通っている学生なら召集されてもいい、って思うわけじゃないけど、なんだかびっくりしてしまった。




聞いてみると、他の隊員さんも大学生だったり、学校の先生をしていたりしたのだと言う。




昔は大学に行く人なんてほんの一握りだった、って聞いたことがある。




それに昔の教師って、現代と違って、「先生様」なんて崇められて、先生をしてるってだけで尊敬の念を集めていたとか。





だとしたら、そういう貴重な人材が、どんどん特攻して『散華』してたってことだよね。




なんだかそれって、国を護るためって言いながら、結局国の財産を失っていったってことじゃない?