「百合ちゃんは俺たち皆の妹なんだからな?」




「そうだそうだ、一人占めするなよ!」





彰は「大人気だなぁ、百合」と微笑んで、





「しかし、最初に百合と知り合ったのは俺だからな。

俺には百合をひとり占めする権利があるのさ」





と、すこし自慢気に言った。





「小憎たらしい奴だなぁ、佐久間め」





そう言って彼らは笑い、あたしの頭を撫でながらのれんをくぐっていった。





年上の男の人たちに、こういうふうに可愛いがられたことのないあたしは、どんな顔をしていいのか分からない。





黙って撫でられていると、彰がぷっと噴き出した。





「………なに、彰」




「いや、ずいぶん困った顔をしているから、おかしくて。

珍しく褒められてしまった悪戯っ子のよう、といえばいいかな」






………また、子供扱いする。



あたしはむすっとして、「彰のばーか」と捨て台詞を投げつけ、彰を置いて店に戻った。




後ろで、くすくすと笑う彰の声を聞きながら。