戦争の手伝いをすることが、誇り?



そんな考え方は、どうしても、すんなりとは受け入れられない。




だってあたしは、現代で、『戦争は恐ろしいもの』、『二度と繰り返してはならない過ち』だと教えられてきたから。




それなのに、この時代の人たちは、戦争のことを悪いものだとはとらえていない。



1945年の初夏といったら、もう終戦目前で、戦況は日本が圧倒的に不利になっているはず。




でも、新聞などではずっと、日本が勝ち続けているように報じられていたんだって。




だから、誰もが『日本が敗けるはずはない』と信じているみたい。




国民みんなが一致団結して、報じられる戦局に一喜一憂して、日本軍を応援している。



まるでオリンピックか何かを観戦しているような印象を受けた。





結末を知っているあたしとしては、何と言えばいいか分からない。





掃き掃除を終えると、千代は大きく手を振りながら帰って行った。





その後ろ姿を複雑な気持ちで見送り、千代が持って来てくれた魚の箱を持って、あたしは店の中に戻った。