それから佐久間さんは、静かな口調で自分の話をしてくれた。



あたしは百合の花の中に座り込んで膝を抱え、黙って話を聞いていた。





佐久間さんの地元は、ここからは遠く離れたところにある、冬になると雪に埋もれてしまうような北国。



家族は、おじいちゃんとおばあちゃん、お父さんお母さん、そして年の離れた弟と妹。




佐久間さんは大学進学のために実家を出て、東京に住んでいたらしい。



そこに赤紙―――召集令状が来て、この土地にある基地へ配属されたんだって。





「佐久間さんて、大学生なの?」





ふと気になって訊ねると、佐久間さんが微笑んで「そうだよ」と頷いた。





「何歳?」




「今年で二十だ」





それを聞いて、少しびっくりする。




あたしが知っている現代の二十歳の人に比べて、佐久間さんはずいぶん落ち着いていて大人っぽく見えた。




大学のサークルで飲みまくってはしゃいでる姿とか、成人式で大騒ぎしてる姿しか、知らないからかもしれないけど。