切り立った崖のふもとを埋め尽くすように、百合の花が群生している。




なめらかな艶のある上品な花びら。



流れるような筋が入ったきれいな緑の葉。



まっすぐに空へ向かって伸びる茎。





「すごい、きれい………」





うっとりしながら花を眺めていると、すぐ後ろでくすりと笑う声がした。





「気にいってくれたか?」





もしかして、あたしの元気がないのを心配して、元気づけるために連れてきてくれたのかな。




そう考えながら振り向くと、佐久間さんの微笑みが、間近であたしを見つめていた。





「初めて君の笑顔を見たなぁ。

喜んでもらえて、連れてきた甲斐があったよ」





今にも触れ合いそうなほどの近さにどきりとして、あたしは思わず少し後ずさった。





それに気づいて、佐久間さんが少し気まずそうに笑う。





「あぁ、ごめん、近かったかな。

君と同じ年頃の妹がいるものだから、なんだか他人とは思えなくてね」





「………妹さん?」





「うん、でももう何年も顔を見ていない。

あの子は地元の家族と一緒に住んでいるんだ」