外にはたくさんの人が歩いていた。



みんな、着物やモンペ、薄汚れたシャツなどを着ている。




道の両側には、いまにも崩れて倒れてしまいそうな、ぼろぼろの木造住宅。




この光景を見るたびに、あたしは自分のいた世界とは違うところに来てしまったんだと実感して、やるせない気持ちになる。




小さく洩れたため息が聞こえたのか、佐久間さんが首を傾げてあたしの顔をじっと見てきた。




でも、何も言わずに歩きつづける。




一体どこに向かっているんだろう?




怪訝に思いはじめたころ、あたしたちは、ひと気もないあたりにやって来た。




夏の濃い緑が周りを覆っている。




森の小道のようなところを歩いていくと、涼しく感じて心地よかった。





少し上り坂になっている。




どうやら、丘のようなところらしい。




前を行く佐久間さんが振り向いて、ゆったりと微笑んだ。





「百合、大丈夫か?」




「あ、はい」




「もうすぐ着くよ」