「本当はね、これを君にあげようと思い立って、君が倒れてから慌てて兵舎に帰ったんだが。


食堂に戻ってきたら君が姿を消したというから、驚いたよ。


でも、いま渡せてよかった」






佐久間さんはあたしの手にキャラメルを3粒握らせた。




つまり、このキャラメルは軍で支給されているものってこと?




それをあたしにくれるために、わざわざ兵舎に戻ってくれたの?






「………ありがとうございます」






あたしは頭を下げてお礼を言った。




そのとき、佐久間さんと一緒に入ってきた兵隊さんたちがあたしをまじまじと見ているのに気がついた。






「おぉ、かわいい女の子だなぁ。

ツルさん、いつの間に看板娘を雇ったんですか?」





「佐久間め、抜け駆けするなよ!」





「お嬢さんお嬢さん、俺はチョコレートをあげよう」





「ビスケットもあるぞ!」






大きな身体の男の人たちに囲まれて、あたしの手の平にはお菓子が山積みになった。