タイムスリップしたらしいと気づいて、一瞬、気を失って。




目が覚めたときには佐久間さんはいなくて、あたしはツルさんにお礼もそこそこに、防空壕に向かったのだ。






「あのときはね、これを取りに戻っていたんだ」






佐久間さんはそう言って、軍服の胸ポケットの中から、何かを取り出した。





「手、出して」





言われるがままに両手を前に出すと、その上にぽろりと小さなものが置かれた。





見ると、白い紙に包まれた四角い物体。





「軍浪精だよ」





あたしが首を傾げてそれを見つめていると、佐久間さんがにっこりと答えてくれた。




「え? ぐ、グンローセー?」




耳慣れない言葉に、あたしはさらに首を傾げる。





「あぁそうか、軍用語は分からないのか。キャラメルのことだよ」




「えっ、キャラメル?」





まさか、この時代にキャラメルがあるなんて。




あたしがぽかんとしていると、佐久間さんが、





「君にあげよう。

最近はキャラメルも軍用しか無いからね。

でも君は滋養をつけたほうがいい、少し体力がなさすぎるようだから」