「ほい百合ちゃん、これよろしくね」




「あっ、はあい」





疲れてぼんやり窓の外を見ていた時に後ろから呼ばれて、あたしは慌てて台所に戻った。





たくあんが盛られた皿を運んでいるとき、入り口ののれんがふわりと動いた。



目を向けると。





「いらっしゃいませ……あ」




「あぁ、君は」





数人の若い男の人たちと一緒に入ってきたのは、最初にあたしを助けてくれた男の人ーーー佐久間さん、だった。






「えと……ご無沙汰してます。

この前はありがとうございました」






お盆を持ったままぺこりと頭を下げると、佐久間さんが大きな手の平をぽん、とあたしの頭にのせた。






「よかったなぁ、元気になって。

ツルさんの店を手伝っているのか?」





「はい、住み込みで」





「うん、それは良かったね。

この間は、俺が基地に一旦戻った後に君が急にいなくなったと聞いて、心配したんだよ」






そう言われて、あの日のことを思い出した。