「む……っ、むりむり、ごめんなさい無理です!

そんな、外で裸になるなんて!」






あたしが必死で首を横に振ると、ツルさんがきょとんとした顔をした。






「あら、百合ちゃん、庭で水浴びしたことないの?」





「なっ、ないですないです!」





「あれま、良いおうちの子なんだねぇ。

それなら、こっちに来なさい」






ツルさんが次にあたしを導いたのは、台所らしき場所だった。




土間の端にコンクリートの塊みたいなものーーー多分『かまど』って呼ばれるものがあって、上面に空いた二つの穴に鍋と釜がすっぽりとはまっている。




下の穴には細い薪が数本だけ、ひっそりと差し込んであった。






「ここなら誰にも見られないし、水を使っても安心だよ」





「お、お風呂場、ないんですか……」





「あら、このへんはみんな銭湯に行くんだよ。家の風呂場なんて贅沢もんさ。


ただ、最近は銭湯もねぇ、燃料の木炭やら薪やらが手に入らなくなってるからね。

営業してない日も多いんだよ。


だから、湯に浸かれるのは四、五日にいっぺんってとこだよ」






………うそ。マジで?




お風呂に毎日入れないとか、考えただけでぞっとする………。




しかも、こんな暑い時期に。




二日やそこら入らなかっただけで、こんなに汗臭いのに。