「あら、百合ちゃん!!」






のれんをくぐると、ツルさんが慌てて駆け寄ってきた。






「どこ行ってたの、心配したんだよ!」





「え……心配?」






見ず知らずのあたしを?




素直には信じられなくて、あたしはツルさんの顔を覗き見た。





そんなあたしに構わず、ツルさんは「さ、入って入って」と店の奥に連れ込む。






「あれまぁ、こんなに汚れちまって………いったいどこで寝てたんだい?

とりあえず汚れを落とさなきゃ」






そう言ってツルさんがあたしを連れて行ったのは、裏庭だった。





真ん中に大きなたらいが置いてある。





ツルさんはそのたらいに水を張り、「さ、水浴びしなさい」と言った。





「え………こ、ここで? 水で?」





「あら、あんたんちはこうじゃなかったかい? 大丈夫だよ、夏だからね」





「でも、ここ、庭………」





「塀があるから大丈夫さ」






ツルさんはあっけらかんと言って、「服、脱いで」と催促した。