でも、そんなあたしの動揺を完全に無視して、その人はすたすたと歩き出した。





抱かれた身体が上下に大きく揺れて、ぐらぐらする。






「危ないから、つかまっていなさい」






と耳許で囁かれて、あたしは何も考えられず、言われるがまま、その人の首に両腕でしがみついた。





樹の根元にそっと降ろされて、あたしは「ありがとうございました」と小さく頭を下げた。




その動作で、また頭がくらくらする。





貧血を起こしたときのように、視界の隅に星が散っていた。






「………少し落ち着いたら、涼しい所に連れて行ってあげよう。


君、どこの学校の子だい?」






そう言ってその人はあたしの服装を確認するように視線を走らせた。




その途端、驚いたように目を瞠る。






「……….き、君、なんだ、その格好は?


足が丸見えじゃないか……。


モンペはどうした、盗まれでもしたか?」






---モンペ?



って、なんだっけ?




なんか聞いたことがあるような、ないような………。