第三章 盛夏
第3節 新しい世界
*
新しい世界だ、
と思った。
特攻資料館の外のベンチに座り、涙が枯れるまで泣いて、
先生が買って来てくれたミネラルウォーターを一口飲んで、
ふと空を見上げたとき。
ここは新しい世界なんだ、と思った。
青く澄んだきれいな空。
ゆったりと流れていく白い雲。
ふわりと肌を撫でるそよ風。
風に吹かれてそよぐ緑。
目映い陽射し。
ここが、彼らの守ろうとした世界だ。
彼らが、自らの命を犠牲にしてまで叶えようとした、尊い平和だ。
空の真ん中を、飛行機が飛んでいくのが見えた。
白い飛行機雲が、青い空にぽっかりと浮かび上がる。
あたしは空を仰いだまま、ゆっくりと目を閉じた。
瞼に感じる太陽の熱。
あの時代には、こんなふうにのんびり空を見上げるとことさえできなかった。
空に浮かぶ飛行機の影に、だれもが怯えていた。
今は、この日本では、誰ひとり、頭上を飛ぶ旅客機に怯えたりしていない。
第3節 新しい世界
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新しい世界だ、
と思った。
特攻資料館の外のベンチに座り、涙が枯れるまで泣いて、
先生が買って来てくれたミネラルウォーターを一口飲んで、
ふと空を見上げたとき。
ここは新しい世界なんだ、と思った。
青く澄んだきれいな空。
ゆったりと流れていく白い雲。
ふわりと肌を撫でるそよ風。
風に吹かれてそよぐ緑。
目映い陽射し。
ここが、彼らの守ろうとした世界だ。
彼らが、自らの命を犠牲にしてまで叶えようとした、尊い平和だ。
空の真ん中を、飛行機が飛んでいくのが見えた。
白い飛行機雲が、青い空にぽっかりと浮かび上がる。
あたしは空を仰いだまま、ゆっくりと目を閉じた。
瞼に感じる太陽の熱。
あの時代には、こんなふうにのんびり空を見上げるとことさえできなかった。
空に浮かぶ飛行機の影に、だれもが怯えていた。
今は、この日本では、誰ひとり、頭上を飛ぶ旅客機に怯えたりしていない。