『父上様


厳しく 正しく お育て頂き

感謝の言葉もございません


甚大なる御恩に

死んで報いる光栄を得ました


特攻の大命を賜り 明日 征きます


幼少の頃よりの念願を果たして

お国の為に華と散ります

空の護りに華と散ります


皇国の永遠無窮を信じて征きます』






まったく迷いを感じさせない、力強く凛とした文字。



あまりにもまっすぐな言葉。





あぁ、彰だ………と思った。




強い信念をもった、揺るがないまっすぐな瞳。






『母上様


日本女性の鑑たる

強く優しき母に愛されて育ち

彰は幸せでした


どうか 泣かないでください

悲しみではなく 喜びの死です


彰には 何も思い残すことはありません


生前の親不孝を お許しください


お先にあの世へ行って

のんびりとお待ち致しております


いつまでも いつまでも ご達者で』






お母さんへの手紙は、お父さん宛てのものに比べると、ずいぶん優しく柔らかな線で書かれていた。




あぁ、これも彰だ、と思う。



まっすぐな強さと、おだやかな優しさ。



その両方を持った人。





まっすぐに前を見つめる強い瞳と、優しく包み込むような微笑みが、あたしの心に浮かんだ。