それは、石丸さんの手紙だった。




達筆だけど、字がつながっていないので読みやすい。





『どうも こんばんは


あの世からの手紙です』





石丸さんらしい書き出しだな、と思って、すごく懐かしくなった。






『明日 出撃いたします


父上様 母上様

二十余年 誠に御世話になりました


楽しい人生でありました


何一つ未練などありません


ついでに 借金もありません


女関係なども清き身でありますので

どうか御安心ください


それでは 征って参ります


笑って征きます

さようなら』






すこし、笑ってしまいそうだった。




家族に宛てた遺書に、『借金』だとか『女関係』だとか書くなんて。





石丸さんの、あっけらかんとした屈託のない笑顔が思い浮かんだ。




本当に、すごく明るくて楽しくて、朗らかな人だった。




きっと、自分が死んだことで家族が悲しまないように、その悲しみが少しでも軽くなるように、こんな手紙を遺したんだ。