奥さんに向けた言葉の後ろに、その娘に宛てた言葉があった。




子どもが読めるようにという気づかいだろうか、それはカタカナで書かれていたので、あたしにも読むことができた。






『カヨヘ

オオキクナッタラ ヨンデクダサイ


オトウサンハ カヨニハ アエマセンガ

イツモ ソラカラ ミマモッテイマス



キチント ベンキョウニ ハゲミナサイ

オカアサンノ テツダイヲ シナサイ

オカアサンノ イイツケヲ マモリナサイ

シンパイヲ カケテハ イケマセン



オトウサンヲ ホコリニシナサイ

サミシガッテハ イケマセン

オトウサンハ カミカゼトナッテ

オクニヲ マモッテ イルノデスカラ



カヨモ シッカリ ベンキョウヲシテ

リッパナ ニホンジンニ ナリナサイ』






………佳代ちゃんは、この手紙を読んだのだろうか。



佳代ちゃんが自分で読めるようになった頃にはもう、戦争が終わって何年も経っていただろう。




そのとき、佳代ちゃんは、会ったことのない戦死したお父さんの言葉を、どう思ったのかな………。





あたしはそんなことを考えながら次の手紙に目を移した。