蝉の声を両側に聞きながら、あたしたちは資料館の中に入った。




入り口を入ってすぐのところに、古びてぼろぼろになった戦闘機が展示されていた。



彰たちが乗り込み、そして運命を共にした特攻機と同じものだった。




………くら、と目眩がした。



あの日の記憶が驚くほど鮮明に甦る。





笑顔で手を振り、颯爽と行ってしまった特攻隊員たち。



黒い点になって南の空に消えてしまった人たち。





こうして見てみると、当時の戦闘機は、現代の飛行機に比べて、なんて小さいんだろう。




こんなに頼りないものに命を預けて、彼らは行った。




本当に目的地まで辿り着けたのだろうか?




途中で不時着したり、墜落したりして、志半ばで終わる例も少なくなかったという。




彰は?



彰はどうなったんだろう………。





頭がぼんやりして、何も考えられなくなった。