行き先も分からないままバスに揺られる。



あたしはぼんやりと外を眺めていた。




真っ青に透き通った青空。



遠くに入道雲の群れが見える。




彰たちが出撃していった日の空を、彰たちが吸い込まれていった空を、なんとなく思い出した。





一番前に座っていたアオキが立ち上がり、バスガイド用のマイクを取った。





「そろそろ着くぞー。

荷物まとめて準備しとけよー」





クラスメイトたちがざわざわと動き出す。




あたしもカバンを膝の上にのせた。




また、ぼんやりと窓の外を見る。



道の端に、大きな縦長の看板が立っていた。




何気なくその文字に目を凝らしたとき、どく、と心臓が脈うった。





『特攻資料館』





どくどくどく、と鼓動が早まる。





特攻、という文字が、看板を通り過ぎてからも目に焼き付いて離れない。




バスは、看板が示す通りに角を曲がった。




そしてーーー特攻資料館の駐車場に入っていった。





胸が早鐘を打つように動悸している。




みんなが立ち上がってバスを降りはじめたので、あたしはほとんど無意識にそれに続いた。




でも、頭は真っ白だった。