「うそ………うそ、なんで?


どうして? いつの間に………?」





あんなに戻りたかった世界のはずなのに、あたしは戸惑いを抑えきれなかった。



なんで急に、こんな………




もう戻れないと思い込んでいたし、心の準備が全然できていなかった。





呆然としながら、とにかく、静まり返った街並みの中を歩いていく。





そうしながらも、頭の中では70年前の世界のことばかり考えていた。






ツルさんにお礼を言っていない。




千代にお別れを言っていない。




そして………彰の手紙を読んでいない。





せっかく彰が書いてくれた手紙なのに、ツルさんの家に置きっ放しにしてきてしまった。





いちおうカバンの中やポケットの中を探してみたけど、もちろん入っていなかった。





驚きや後悔で混乱しながら、あたしは気がつくと自分の住んでいたアパートの前に辿り着いていた。





いま何時だろう、と思って、スマホを取り出す。




なぜか、充電は切れていなかった。





そして、表示された日付は………母親と喧嘩をして家を飛び出した日の、翌日。




朝5時半。




壊れているのかな、と思った。