自分の目を疑いながら、あたしは辺りを歩き回る。





ーーーあるはずのものが、何ひとつない。




家もアパートもマンションも、電信柱も電線も、道路も信号も歩道橋も、公園も学校も交番も。



なにもかも、なくなっている。





その代わり、そこにあるのは、ただ一面の野原。






「………なんで? どういうこと?」






あたしは野原のど真ん中に呆然と立ちすくんだ。




一晩にして、街が消えた?




そんなわけない………。





あたしは無意識のうちにゆっくりと歩き出した。




とにかく、この現状を理解させてくれる何かを見つけたい、という一心で。





しばらく歩くと、少しずつ人間の気配を感じる景色になってきた。





でも、何かがおかしい。





訝しく思って考えを巡らせた結果、その理由に思い当たった。





立ち並ぶ家も、電柱も、看板や柵も、全部が木製なのだ。





だから、町全体が薄汚れた茶色に沈んで見える。




どう考えても、これはあたしの住んでいる街じゃない。