家を飛び出し、路地を抜けて表通りに出て、周りの人にぶつかりながら走る。





空襲を受けてまだ復興も追いついていない、焼け焦げた町の中を。




基地に向かって。





今まで生きてきて、こんなに早く走ったことはない。




あの空襲から逃げたときでさえ、今よりは遅かったと思う。





照りつける陽射しが刺すように痛くて、



汗が滝のように流れて、



脇腹が痛くて、



喉が引きつれたように苦しくて、



脚が棒みたいになって、



何度も何度も転んだ。





でも、あたしは、一度も速度を緩めなかった。






………間に合って。




お願いだから、間に合って。





神様だか、仏様だか、分からないけど。



あたしはただ、祈った。





こんなに酷くて惨い世界を作った神様。



彰の死を見過ごそうとしている、無慈悲な神様。




せめて、今日くらいは、あたしの願いを叶えてよ………。