「じゃあな、百合。


怪我や病気をしないように気をつけるんだよ」





「…………っ」






嗚咽が洩れて、何も言えない。




最後なんだ、と痛切に思った。




彰の言葉の端々から、「これが最後だ、さようなら」という思いが伝わってきた。





「百合、元気でな………」





何も言えないでいるあたしを置いて、彰は店を出た。





ツルさんがあたしの手を握り、一緒に外に出る。





基地へと帰っていく特攻隊員たちの背中が、月明かりに照らされていた。




楽しげに談笑しながら、肩を組みながら、小突き合いながら、歩いていく。





一番後ろで、彰はみんなから少し離れてゆっくりと歩いていた。





遠ざかっていく背中。






ーーー最後なの?




これで、もう、最後なの?



もう会えないの?




本当に………?





………いやだ。



やっぱり、そんなの、いやだ。





気がつくと、あたしはツルさんの手を離して、走り出していた。






「………きら……彰!!」






あたしの叫びを聞いて、後ろのほうにいた隊員たちが振り返る。




あたしがまっすぐ彰のもとに駆けつけると、みんなは素知らぬ顔で先に行った。





走った勢いそのままで飛びついたあたしを、彰が抱きとめる。





あたしは彰の胸に顔を埋めて、





「行かないで………」





と呟いた。