「………ありがとうございました」





あたしはツルさんと並んで頭を下げる。





「今まで、本当に、ありがとうございました。


皆さんに百合ちゃん、百合ちゃんと親しく呼んでいただいたこと、とても嬉しかったです。


ありがとうございました………」





尊敬と感謝を込めて、あたしは深く頭を下げた。




ゆっくりと顔を上げると、優しい笑顔があたしの周りを包んでいる。





「こちらこそありがとう、百合ちゃん」




「俺は妹がいないから、百合ちゃんが可愛くて仕方がなかったよ」




「百合ちゃんは俺たちの妹だからな」




「いつも笑顔で迎えてくれて、嬉しかったよ」





一人ずつ、あたしの頭を撫でて、店を出て行く。




軽く触れるだけの人も、何度も撫でる人も、わざと髪を掻き乱すように撫でる人もいた。




ぐしゃぐしゃになったあたしの髪を見て、みんなが笑った。




涙が溢れた。





最後は、彰だった。





「………あきら」





声が震えて、掠れて、うまく呼べない。




彰がくすりと笑って、ぽん、ぽん、と頭を撫でた。





「泣き虫だなぁ、百合は」




「………泣いてない」




「もうじき泣くだろう。ほら、もう涙が」





からかうように笑いを含んだ、優しい声だった。




あたしの目から、ぽろぽろと涙が溢れてくる。