もしかしたら、泣いているのかもしれない。




あたしは思わずツルさんのもとに駆け寄って、抱きついた。





「ふふ、百合ちゃん、どうしたの」





笑いながらあたしの顔を覗き込んだツルさんは、泣いてはいなかった。




でも、その目には、今にも零れ落ちそうに涙が浮かんでいた。





あたしは何も言えずに、ただ黙って、ツルさんの胸に顔を押しつけた。





この顔を、彰たちに見られるわけにはいかなかった。




だって、困らせてしまうって分かっていたから。





食堂の空気が、さっきまでとは微妙に変わっていた。




隊員たちの中には、顔を俯けて目頭を押さえるような仕草をしている人も、何人かいた。




それを察したのか、彰の後ろに立っていた石丸さんが、屈託のない声を上げた。






「俺の寿命は、まだ四十年分は残ってるだろうから、残りはツルさんにあげますよ。

閻魔大王に会ったら、そうお願いしてあげますから、安心して長生きしてください」






それを聞いた彰が、ぷっと噴き出しておかしそうに言う。






「なんだ石丸、お前は地獄に行くつもりなのか。

閻魔大王がおられるのは地獄だぞ?」





「あっ、そうか、しまった!」






石丸さんが照れ笑いを浮かべながら頭を掻くと、みんなが一斉に笑った。




空気が一斉に和らいだ。