ーーーおかしい。




戦死することを喜びだと言う軍人も、


戦死した人を立派な日本人だと賛美する一般人も、


みんな、おかしい。




どうして誰も気づいてくれないの?





あたしは彼らの顔を見ることができず、台所に駆け込んだ。



ツルさんはあたしの肩を抱き、「ここにいなさい」と言って、自分で食堂に料理を運んだ。




ツルさんが現れると、みんなが一斉に歓声をあげた。





「ツルさん、今までありがとう」




「俺たちは、必ずや鬼畜米英を叩き潰してみせますよ」




「何としてでも敵を撃滅して参ります」




「ラジオで敵空母轟沈の知らせが流れたら、俺たちがやったものと思ってください」




「必死必沈の覚悟で行って参ります」





ツルさんは優しい笑顔で頷き、「行っていっしゃいませ」と言った。





「ご武運をお祈りしております」





ツルさんは深々と頭を下げた。




そのとき、彰が立ち上がるのが見えた。




あたしははっと息を呑む。




彰は穏やかな笑みでツルさんの肩を抱き、「顔を上げてください」と言った。






「………ツルさん……。

今まで、本当にお世話になりました。


ツルさんの美味い料理のおかげで、俺たちはつらい訓練にも耐えられました。

感謝しています。


どうか、達者で長生きしてください」






彰の言葉に、ツルさんが肩を震わせながら何度も頷いた。