次は、『空から轟沈』という歌が聞こえてきた。





空から飛行機で体当たりして、敵艦を沈めよう、って意味。






「目指す空母をどかんとやらにゃ

大和男子の名がすたる

轟沈 轟沈 空から轟沈


富士と筑波を両手にだいて

大和男子は空の上

皇国になつた翼をかって

にくい米英ひとたたき

轟沈 轟沈 空から轟沈」






敵の空母を沈めないと、日本男児じゃない、って?




わけがわからない。




そんなことしなくたって、あなたたちの名前がすたることなんてない。





この人たちは、国からそんな嘘を吹き込まれて、特攻しないと罵られると思い込んでるの?





どうしようもなく腹立たしくて、どうしようもなく悲しかった。





何も言えない自分が情けなくて、悔しくてたまらなかった。





こんな悲しい歌、聞きたくない。




あたしは耳を塞ぎたくなった。





でも、そのとき芋の煮物の大皿をツルさんから渡されて、あたしはしぶしぶ食堂に持って行った。