「そうだねぇ。

明日には敵艦もろとも亡くなられる身だというのに、なんて朗らかな………」





ツルさんは食堂のほうに目を向けて、静かにそう言った。





「みんな、極楽に行かれる方々だからね」




「………極楽?」





あたしが訊き返すと、ツルさんはこくりと頷いた。





「自分の命をもってお国を護られる、尊い生き神さまだからね。

あの方々は体当たりをなさった後には、極楽に行かれるんだよ」





極楽、って、天国のことだろうか。



特攻で死んだ人たちは、天国に行けるってこと?





…………なにそれ。



この時代の人たちは、そう言って特攻を美化してるの?





特攻をしたら極楽に行けるから、だから敵に体当たり攻撃をして死ね、って?





馬鹿みたい。



そんなの本当に信じてるの?





極楽に行けるんだから、彼らが死んでもいいって?




そんなはずない。




そんなことで、あんなに若い人たちが死んでいいわけない。





死んだ後に天国に行けたからって、なんなの?




生きてるほうがいいに決まってる。