第二章 仲夏




第3節 空に散る華












翌朝、千代が店にやって来た。





「石丸さんたち、出撃だってね」





千代は笑いながら言ったけど、その瞳の奥底にある複雑な色に、あたしは気づいてしまう。





「うん………明後日の十三時半」





あたしが小さく答えると、千代はこくりと頷いた。



あたしたちは店先に並んで座り、静かに話をした。




千代が石丸さんとの出会いを教えてくれた。





「私の通ってる女学校でね、勤労奉仕で特攻隊のかたのお世話をしているの。

毎日基地の兵舎まで通って、隊員さんたちのお洗濯ものを洗って差し上げたり、靴下なんかの繕い物をしたり、お食事のお世話をしたり。

お食事の後は、みんなで輪になって色んなお話もしたりするの。


最初の頃はね、隊員さんたちと話すのが恥ずかしくて、みんな緊張していた。

そしたらね、石丸さんが私たちの緊張をほぐそうとしたんでしょうね、故郷の盆踊りを見せてくれたの。

あんまり音痴で、しかも不思議な動きをするもんだから、みんな笑ってしまった。


でも、それで恥ずかしいのも飛んでいって、すぐに隊員さんたちと打ち解けてお話できるようになったの。


あぁ、なんて気遣いのできる立派な方なんだろう、って感動したわ」