足がすくんで、それ以上すすめない。




恐怖心を振り払うように、あたしは乱暴なしぐさで足元にカバンを落として、その上に座った。





足下から、ひやりとした冷気が上がってくる。




夏だなんて信じられないくらい。




今はまだ初夏だから、確かに夜はひんやりする日もあるけど。




それにしても、ここまで寒いなんて。



昼間も陽が当たらないからだろうか。



それとも、本当に………いや、そんなはずない。




自分の考えでまた背中が寒くなるのを無視して、あたしはカバンの中から体育のジャージを取り出した。




春からずっと学校に置きっぱなしにしていて、たまたま今日、そろそろ持って帰ろうと思ってカバンに入れていたのだ。




まさか野宿する羽目になるとは思ってもみなかったけど、ほんとラッキーだった。




これで凍死しないですむだろう。



あたしはジャージの上下を着て、冷たい土の上に寝転がった。


直に寝てみると、思った以上の寒さだ。



どうしよう、本当に凍死しちゃったら。



そう思ってから、まあいいか、と思い直す。


いいや、べつに死んだら死んだで。


こんな人生、死んだってかまわない。




奥の方は真っ黒な闇で、何も見えない。



そこに何があるのか、何がいるのか、全く分からない。




あたしは奥を見ないように入り口に顔を向けて、ゆっくりと目を閉じた。