「………たしかに、俺じゃないといけない理由はないよ」






彰の声が、星明かりと共に降ってくる。






「でもね、俺は………他の奴が征くのを見送るより、自分が征ったほうが、百倍も千倍も気が楽なんだ」






彰は穏やかな面持ちで、そんなことを言った。






―――どうして、こんなにも伝わらないんだろう。




同じ言語で話しているはずなのに、どうして彰とあたしは、お互いの思いを伝え合って分かり合うことができないんだろう。





あたしには、彰の考えが全く理解できなかった。



どうして、そんなに疑いもなく、あなたは死にに行こうとするの?





同じように、あたしの気持ちも全く彰には理解できないんだろう。




どうしても彰を失いたくない、


ずっと生きていてほしい、


っていうあたしの気持ち。




あたしは我が儘で自己中心的な人間だから、『他の誰が死んでも、彰にだけは死んでほしくない』って思ってしまう。




でも彰は、『他人が死ぬのを見るくらいなら、自分が死んだほうがいい』って思うんだ。





どうしても、理解し合えない。