あたしももう14だし、幽霊なんかいないってもちろん分かってる。




まぁ、防空壕って確かに不気味だけど………背に腹は代えられない、ってやつ?





あたしはひとつ深呼吸をして、防空壕に一歩一歩と近づいた。





街の夜は、街灯もあるし、家の明かりもあるし、そんなに暗くはない。




でも、崖の裾にぽっかりと空いた穴の向こうは明かりも届かず、本当に真っ黒だった。




ほんものの暗闇、って感じ。




どんなに目を凝らしても、なんにも見えないのだ。





高鳴る鼓動を懸命に無視して、あたしは防空壕の前に立った。




入り口から一歩踏み込んだところに何があるのかも見えないくらい、まったく奥行きも分からないくらい、真実の闇。





ぞく、と全身の肌が粟立った。





でもあたしは、億しそうになる自分の心を鼓舞して、中に足を踏み入れる。





だって、誰にも見られずに一晩明かせるところなんて、ここくらいしか知らないもん。





中に入った瞬間、あたしの視界は完全に闇に奪われた。