彰はやっぱり何も言わない。



ただただ静かな瞳で板倉さんの目をじっと見つめている。





「………特攻に志願したこと、後悔しています」





板倉さんがきっぱりと言った。




後悔、という言葉が、重くあたしの心にのしかかった。






「俺は絶対に、特攻なんかしたくなかった。


でも、周りの仲間たちが皆手を挙げて………。

一人だけ挙げていない俺を、上官が恐ろしい目つきで睨んできた。

志願しなければどんな目に遭うか、と思うとぞっとして………俺は手を挙げてしまった。


………自分の弱さに嫌気が差します。

なんであの時、周りに流されてしまったのか、拒む勇気が持てなかったのかと、吐くほど後悔しました。


一度は、こうなったらもう仕方がないと諦めましたが………。

それでも俺は………」






板倉さんのまっすぐな目が、驚くほどの強さで彰を見上げた。






「俺は、死ねないんだ。彼女のために」