彰が少し目を見開く。




板倉さんは彰の胸元にすがりつき、俯いて語りはじめた。





「………幼馴染みなんです。


彼女の家族は空襲でみんな亡くなってしまって………彼女も命だけは助かったけど、脚に大怪我をして、一生歩けないと医者に言われました。

そんな身体では結婚もできないと………。


でも俺にはそんなこと関係なかった。

どんな身体でも、彼女と結婚できるならいいと、求婚しました。

彼女は泣いて喜んでくれて………。


でも、そんな矢先に赤紙が来たんです」





板倉さんは苦しげに眉根を寄せた。



そして一度息を吸い込んで、言葉を続ける。





「俺は、必ず生きて帰ってくるから信じて待っていろ、と彼女に言いました。

一人きりで残されることになった彼女は、ひどく心細そうな顔をしたけど、信じていますと言ってくれました。


出征の日、上手く動かない脚で必死に歩いて、駅まで見送りに来てくれました。

その頼りない姿を見て、俺は、何が何でも生き抜いてやる、と自分に誓ったんです」