板倉さんの叫びを聞いた瞬間、あたしはふいに思い出した。




板倉さんは、十七歳。



現代で言えば、高校二年生。



………高校二年生だよ?




―――考えられる?



たったの十七歳で、高校二年生で、『国のため国民のために死ね』という絶対の命令を受けるなんて。



そんなの、「はい、分かりました」って受け入れられる?




やり残したことがたくさんあって、当然だよ。



だって、まだ、たったの十七年しか生きてないんだから。



人生の半分の半分も生きてないんだから。





―――特攻なんて、やっぱり、不条理だ。



どう考えたっておかしい。




やりきれない怒りが沸き上がってきたところで、板倉さんが言葉を続けた。





「佐久間さん、俺………故郷に帰りたいんです。


故郷に残してきた許婚がいるんです」