「彰………あのね」





あたしが思わず声を上げると、彰はちらりと一瞥して、静かに首を横に振った。




何も言うな、ってこと?



黙ってろ、って?




あたしは悔しさに唇を噛む。



すると彰の目がわずかに細められて、微かに笑みを浮かべたような気がした。




あれ、と思ったときにはもう、彰は板倉さんに向き直っていた。






「板倉」




「………っ、佐久間さん……」





掠れた声で呟いた板倉さんは、唐突に彰にすがりついた。



彰がぱっと両手を差し出し、よろめく板倉さんの身体を支える。






「佐久間さん、佐久間さん!


どうか……どうか見逃してください!」





板倉さんは今にも泣き出しそうな顔で叫んだ。





「俺は、俺は………まだ死にたくない!


やり残したことがたくさんあるんです!」