「そうか………」





彰は呟いて、また首を巡らせた。





「板倉さんがどうかしたの?」





首を傾げて訊ねると、彰は一瞬悩むように髪を掻き上げてから、声を潜めて答えた。





「…………板倉が、兵舎から消えた。

なんの伝言も書き置きもなく………」





「え………うそ、なんで?」





「分からない」





彰は眉根を寄せて首を小さく振った。



さっきの板倉さんの、どこか翳った表情が、ふと甦った。





「………あたしも、探す」





あたしがきっぱりと言うと、彰は驚いたように目を見開いた。





「え? もう遅いから危ないぞ」




「でも………早く見つけなきゃいけないんでしょ?」




「それは、まぁ………上官に知られる前に探し出したいけど………」




「じゃ、急がなきゃ。

あたし、向こうに行ってみる。

彰はそっち探して」






あたしは彰の返事も聞かずに駆け出した。