地面を見つめたり、空を仰いだり、焼け焦げた町を眺めたりしながら、あたしはずいぶん長い時間そこに座っていた。





足下の地面を、蟻の行列が歩いていた。




戦争をしている国の、空襲で焼かれた町でも、小さな生き物の営みは平和な現代と変わらないのだ。





そんなことをぼんやりと考えていて、ふと気がつくと、


いつの間にか辺りは青っぽい薄闇に覆われ始めていた。





そろそろ帰らなきゃ………


ツルさんが心配してるよね。





そう思ってゆっくりと立ち上がったとき、向こうからばたばたと慌ただしい足音が聞こえてきた。




彰の足音だと、すぐに分かった。




反射的に顔を上げると、彰はきょろきょろと辺りを見回しながら駆けている。





「あきら」





思わず声をかけると、彰がぱっとこちらを向いた。





「百合! ここにいたのか!

君、板倉を見なかったか!?」





いつになく焦った様子の彰。



珍しいな、と思いながら、あたしは「見てない」と首を振った。