第二章 仲夏




第2節 星空の彼方












空襲で焼かれた町は、ひっそりと静まり返っていた。




あの日から一週間近くが経ったけど、

どこにも木材などの充分な物資などはなく、復興など夢のまた夢、という状態だった。



とにかく、みんな、家族全員が飢え死にせずに生活することだけで、精一杯。




あたしも、ときどき空襲の夢を見て、真っ赤な炎や死にゆく人々の残像にうなされながらも、なんとか日々を過ごしていた。






「………それでね、ちょうど家族みんな留守にしてたもんで。

命だけは助かったけどねぇ。


着物も家財道具も銀行の通帳も、ご先祖様のお位牌も、何もかも焼かれちまったよ………」






家を火事で失った常連客のおじさんが店にやってきて、途方に暮れたような顔でツルさんに話している。




ツルさんは「何て言ったらいいか……」と顔を曇らせた。






「まぁ、嘆いたってしようがないよ。

とにかく、通帳の再発行にも何ヶ月かかるか分からないって言われちまったからね、すぐに家を建て直すってわけにもいかないって。

住むところもないからね、嫁の実家に疎開することにしたよ」





「あら、そうですか。寂しくなりますねぇ………」





「本当だよ、何十年も暮らした町だからね、離れがたいけど、仕方ないね………」






おじさんは力なく笑いながら、そんなことを言った。