ーーー町の景色は、一変していた。




あたしたちの知っている町は、もうそこにはなかった。





焼け野原、って、こういうのを言うんだろうか。





見渡す限り、黒く焦げた瓦礫の山。




どこまでも、どこまでも続く焼け跡。





見えるはずのない遠くの建物まで見える。




遠い遠い街のビルが、遥か向こうで朝靄に霞んでいた。





あたしたちは口もきかずに、ゆっくりと歩き出した。





焼け崩れた家々。




焼け焦げた死体もまだいくつか残っていて、


町の人たちがその死体を焼け焦げたトタン屋根に載せ、針金をつけてずるずる引きずりながら運んでいた。




ところどころ、まだ煙の出ている場所もあった。



焦げた匂いが辺りに充満している。





あの地獄は、まだ終わっていないんだ、と思った。





………ツルさんは大丈夫だろうか?



千代は怪我をしたりしていないだろうか?



基地の隊員さんたちも無事だろうか?





不安ばかりが膨れ上がって、あたしは力なく俯く。




すると、彰が「百合」と囁いて、そっとあたしの手をとった。





そのまま、彰の掌にぎゅっと包まれる。




あたしたちは手を繋いで、鶴屋食堂までの道のりを歩いた。