「俺たちがきっと戦争を終わらせてやる。

少しでも日本に有利に終わらせてみせる。


そうしたら、必ず平和な時代が来るよ。

百合を恐がらせるものは、なんにもなくなるよ。


俺は、そのためなら命も惜しくない」






ーーーちがう。



ちがうの。



そんなことを言ってほしいんじゃないの。



そんなことをしてほしいんじゃない。





それなのに、彰の声があんまり優しいから、



喉が絞られるように痛んで、あたしは何も言えなかった。






「俺が、ついているから………」






彰があたしをさらに強く抱き寄せ、耳許で囁く。






「俺がいるから………」






彰の温もりに包まれて、涙腺がじわりと緩んだ。




温かい涙が頬を伝う。





彰が安心させるようにあたしの背中を撫でてくれた。




何度も、何度も。





心地よさに、ゆっくりと瞼を閉じる。





彰の胸に押し当てた瞼の裏には、もう恐ろしい光景は見えなかった。





彰の腕に包まれた耳には、苦しげな呻き声も届かなかった。






「百合、百合、眠れ………」






優しい声とあたたかな体温に包まれながら、あたしはやっと眠りについた。