付近の火事がおさまるまで川辺にいて、あたしたちは避難場所の小学校に向かった。





鶴屋食堂のある辺りは火事がひどく、まだ行かないほうがいいという噂を聞いたのだ。




ツルさんのことが心配でたまらなかったけど、この足では辿り着けそうにもなかった。




これ以上彰に負担をかけたくもなかった。





小学校の運動場には、顔に布をかけられた焼死体が無数に並べられている。




その布を一枚一枚めくり、家族がいないかを確かめていく、たくさんの人たち。





男の子の家族がその中にいるのかもしれない、とぞっとしたけど、彰はそこを素通りした。





木造の教室棟の中に入ってみると、どの教室にも人が溢れている。




かろうじて入れそうな場所を見つけて、あたしたちはやっと腰を下ろした。





赤ちゃんの泣き声や、顔を寄せ合ってぼそぼそと喋る声や、「痛い痛い」とわめく声が響いていた。





そのとき、向こうから「吉行ちゃん!」と声がした。




振り向くと、焼け焦げた服を着たおばさんが目を丸くしてこっちを見ていた。