「行こうか。


もうすぐで川に着くよ」






あたしは再び彰の背中にしがみついた。





川に向かう道には人が溢れていた。



怪我や火傷を負った人もたくさんいた。



家族とはぐれたのか、道端で泣いている子どももいた。




誰もが自分のことに精一杯で、見向きもしない。





でも、彰は違った。




身体を揺らしてあたしを背負いなおすと、泣きじゃくる幼い男の子に手を差し伸べる。






「君、ここは危ないから、俺たちと一緒に行こう。


川に行けばお父さんやお母さんがいるかもしれないよ」






男の子はわんわん泣きながら彰の手にしがみついた。





あたしを背負い、男の子の手を引いて、彰はまた歩き出した。





川にかかる橋のたもとには、たくさんの人が集まっていた。




川の水で渇きを癒す人、 火傷を冷やす人、川の中に俯けに倒れて動かなくなった人。




でも、男の子の家族はいないようだった。